たい焼き或問
ゴメンナサイ、題名がアレですがただの小ネタです。
「……一つ気になってたんだが」
秋子さんに出された大福を頬張るあゆと名雪を前にそう切り出す。
特にハムスターかリスのように両手で大福を口に押しやっているあゆに向かって。
「あゆはたい焼きではなくて、ほんとは餡子が好きなんじゃないのか?」
「ええっ? そんなことないよ。ボクたい焼きが好きだよ」
大福を持ったまま驚くあゆ。
別に驚かんでもいいだろ、それがお前のアイデンティティとか個性とかいうわけじゃないだろうに。
「だって、そんなに幸せそうに大福食べてるじゃないか」
「うぐぅ、大福もおいしいけどたい焼きの方がいいよ」
「わたしも大福よりイチゴ大福の方がいいよ」
そりゃ名雪は餡子好きじゃなくてイチゴ好きだからだろ。
というかお前はイチゴが入ってればなんでもいいのか。
「たい焼きもイチゴジャムがいいけどね」
「いや、そこまで聞いてないって……」
お前はマヨラーの同類か。
そのうち『もうジャムだけで何もいらないよ〜』とか言い出しかねない笑顔の名雪に一瞬寒気を感じた。
「でも大福もたい焼きもそんなに変わらないだろう? 回転焼きなんかになったら型が違うだけで味も同じだし」
「それでもたい焼きが一番だよ」
……違いがよく分からん。
そもそもどれもこれも餡子の味しかしないと思うが。
「じゃあ、カステラとドラ焼きならどっちが好きだ?」
「ドラ焼きっ」
目を輝かせて即答するあゆ。
「見ろ、やっぱり餡子が好きなんじゃないか」
「違うよ、それでも一番はたい焼きだよ」
やっぱりよく分からん。
「あゆちゃんは餡子もたい焼きも好きなんじゃないかな?」
「待て名雪。餡子とたい焼きにどう違いがあるんだ? それなら回転焼きでもいいだろ」
しかし、何でこんな下らない話に俺達は真剣になってるんだろうか?
「じゃあ、おはぎは?」
「おはぎ? うーん、普通……だと思う」
名雪の問いかけに対するあゆの返答が微妙に今までとは違った。
……大福・たい焼き・ドラ焼きがよくて、おはぎは普通。
これはひょっとして……。
「お汁粉とかはどうだ?」
「おしるこ? どんなのだっけ?」
「餡子のおかゆにお餅を入れる甘くておいしいおやつだよ」
「えっ……」
名雪の説明を聞いたあゆの顔がピシッと硬直する。
そして次の瞬間……。
「あ、あれはダメだよ。ボクあれだけはダメ」
首をぶるぶる、手をぶんぶん振りながら全身で『嫌』と意思表示。
その様子を見て名雪が首を傾げる。
「……おいしいのに」
全部腹の中に入ればほとんど同じ、そして共通して甘い。
どこに好き嫌いの違いがあるのかよく分からない。
でもこの理由を聞けば誰もが納得するだろう。
何故なら彼女は女の子だから、と。
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