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められた









♪明日を伝えよう  この広い世界に
 どんなに苦しくても 明日は訪れるように
 明日を伝えよう  この広い大地に
 茂る草たちが   明日も存在するように

 頑張っても   頑張っても
 明日が訪れない人もいる
 そんな人達を  勇気付けるように
 そんな人達も 一緒に明日を伝えよう













彼女の名前は新月殊未。
数ヶ月前からよくこの辺で歌っている。
曲のレパートリーも豊富だ。
しかも歌声だって歌手には負けない。
だが、どこのCD屋を探しても彼女のCDなどは無い。
同じ曲のCDも無い。
彼女が作っているというのだろうか…?
もう一つ気になることが。
近頃彼女はよくこの曲を歌う。
どうしてこればかり歌うのだろう。
そしてなぜこんなに彼女のことを知っているかというと…
俺は今月の始めに見かけて、周りの立ち止まる人に聞き当たった。
彼女はいつ頃からここで歌っているか。
彼女の名前は…と。
そう。
彼女の声に、彼女の歌に。
そして彼女に一目惚れをしてしまった。
それから毎日ここへ向かっている。
冬も半ばになるこの寒い時期に。
彼女は愛想を振りまくことはするが、特定の誰かに話し掛けたりはしない。
そして誰も話し掛けはしない。
ただ、拍手と歓声が起こるだけ。
そして俺もその中にまぎれているだけ。
声をかけることが出来ない。
彼女には、声をかけてはいけない。
そんなオーラが出ているように見える。
それでも俺は…
彼女の音が好きだ。
彼女のことが好きだ。
もっと彼女のことを知りたい。
一言でいいから…
一言でいいから、言葉を交わしたい。
出来ることならば…
彼女と楽しく話したり…
彼女と仲良く遊んだリ…
彼女と一緒にライブをしたり…
色んなことがしたい。
もっと彼女と一緒に居たい。
彼女に俺のことを知ってもらいたい。
でも何も出来ないまま…
一週間がたったある日。

神様は願いを叶えてくれた。
彼女がいた。
彼女が道を…俺の10mぐらい先を歩いてる。
俺は震えた。
震えが止まらなかった。
トロトロ歩いている場合じゃない。
彼女に追いつきたい。
彼女の元へ行きたい。
行って話がしたい。
俺のことを知ってほしい。
そんな衝動から。
俺は…人の波を抜け、車道へ出た。






キキィィィィィィィィィィーッ!



ドンッ








あ…れ…?
何が起こったんだ…?
そうか俺は彼女の元へ行きたいあまりに…
車道に出て…
ひかれたのか…
あ…彼女がこっちを見ている…
電話を始めた…
救急車、呼んでくれるのかな…
でも、もう遅いみたいだ…
さよなら…





・    ・    ・





『クスクスクス…』
誰だ…?
『僕は君だよ』
お前が俺…?
じゃあ俺はなんなんだ…
『正確に言うと、僕はもう一人の君。』
もう一人の…俺…
『せっかく神が味方してくれたっていうのに君が無茶するからさー。』
……………
『てゆうか君、本当に彼女に会いたかったの?』
もちろんだ…
『それにしてはあきらめが早すぎてどうも本気には見えないんだよねー』
なんだと…?
『実はもう、どうでもいいんでしょ?』
そんなことは…ない
『死んじゃったから、もう無理だってあきらめたんでしょ?』
俺は…
『あきらめたんでしょ?』
違う…違う違う違う!!
俺はあきらめたりなんかしない…!
ずっと、ずっと願い続けて…
やっと叶いそうになった夢を…
手放したりはしない!!
『ならさっさと起きろや!』
『根性見せろよ根性!』
ありがとう…
『いいってことよ。俺はお前だし』
じゃ、俺行くわ…
『頑張れよな!』

・     ・     ・

「どりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「わっ」
「ん…ここは…?」
「目を覚ました!先生、先生…!」
そうか…ここは病院…
俺…助かったんだ…

「凄いね、君…あれだけの大怪我でこんなに回復力があるなんて…」
「いつ頃退院できそうですか?」
「このまま順調に行けば、一週間後かな」
「よかった…よかったね…」
さっきも思ったんだけどもしかしてこの声…

ドキドキドキドキドキドキドキドキドキ…

バッ

「あっ新月サンッ!?」
「え…なんでわたしの名前…」
「…なんだか話があるみたいだから、異常もないし僕はこれで失礼するね」
「あ、ありがとうございます」
「…で、なんでわたしの名前…」
「わかんないかなぁ…俺毎日聴きに行ってたんだけど」
「え…それってもしかして…」
「そ。そのもしかして」
「ありがとうございます!毎日わざわざ来てくれてる人がいたなんて…」
「…ところで、なんで新月さんはここに…?」
「殊未でいいですよ。困っている人を助けるのは当たり前の事ではないかと思いますが…」
「困ってる人…困ってるどころじゃなかったわな、確かに」
「そうそう、えっと…明日も来てもいいですか…?」
「もちろん!むしろ来てくれって感じだよ」
「ありがとうございます。では、また明日」

ぺこっ    タッタッタッタッタッ

「可愛いなぁ…明日も来てくれるのか…よぉし!明日は質問色々するぞぉ!」
「そこの叫んでる兄ちゃんよ」
「はい?なんでしょう」
「あの子、君の彼女かえ?」
「なななななっ!そんなわけないでしょう!!」
「違うんかい…ほんならほんまにええ子やなぁ」
「え?」
「お前さんが目を覚ますまであの子ずっと歌うたってはんたんやで」
「それ本当ですか!?」
「あぁ…ごっつう上手かったでぇ…てどこ行きはるんね!」
「彼女を追いかけます!」
「今から追っても間に合わんと思うがの…」
「青春じゃのう」

タッタッタッタッタッ

まだ居てくれ…殊未ちゃん!
「ハァッハァッハァッ」
居ない…
「くそっ…」
早くお礼が言いたかったのに…
しょうがない…明日にするか……

・   ・   ・

病院の食事が不味いだなんて、誰が言ったのだろう。
滅茶苦茶上手かった。
あれから仲良くなった同室の人たちと楽しく喋りながらだったからなのと、この病院が街で評判なのが関係して…というのもあるかもしれないが。
そして食べ終えてもまだ話しをして。
消灯時間になってやっと終わった。

次の日。
早く目が覚めてしまった。
今日も殊未ちゃんがくると思うと、あまりよく眠れなかった。
「ふぁぁ…」
「よぅ、お前さんも目が覚めたのかい」
「あ、賢さん」
「わしはいっつもこの時間だがな」
「早いんですね」
「おう、この部屋じゃわしがダントツで一番よ」
「今日は僕も起きてますけど、いつも一人で何をしてるんですか?」
「………あんま人には言いたくなかんだがのう。お前さんにだけ、教えちゃるわ」
「絵を描いとるんじゃ」
「絵…ですか?」
「毎朝の景色はほんの少しずつ違う。その一日一日の違いを、描きとめてみようと思っての」
「…凄い…ですね」
「なぁーんて偉そうなこと言って、たまたま早く目が覚めた時近くに紙とペンがあっただけだったりもするんじゃがの、ふぁーっふぁっふぁっ」
「……………」
「あ、そうは言うてもそのあとにそう思って、それからは自ら起きとるからな?」
「そう…なん…ですか」
「あーもう暇じゃのう」
ポチッ

ぴーっぴーっぴーっ

「賢さんそれってナースコールじゃ」
「えーのえーの、まあ見ときなはれ」

ダダダダダダダダダッ   ガチャッ

「どうしました!?」
「おー、こっちじゃこっち」
「…また賢さんですか。で、なんの用ですか?」
「腹が減った」
「朝食の時間まで我慢して下さいっ!」
「喉も乾いた」
「………オレンジでいいですか」
「おっけーおっけーふろおっけー」
すると、看護婦さんは歩いていった。

ピーッ ガコッ

「あ、戻ってきた」
「はい、賢さん。遼平君も」
「あ、ありがとうございます」
………まるごとおれんぢ100%……

ゴクッゴクッゴクッ

「ぷはぁーっ!やっぱこれに限るのう」
「…いつもあれを?」
「おう」
俺は苦笑した。

その後、だんだんと起きる人も増え、朝食を終え、また暇な時間がやってきた。
「俺って異常ないからしちゃいけないことないわりに、することねぇなぁ…」
「なんなら絵でも描くか?」
「あ、賢さん…俺あんまし絵得意じゃないんだけど…」
「まぁええから描いてみぃって。暇なんじゃろ?」
「…そうですね。ありがたく借りさせていただきます」

カリカリカリ………

五分後。
コンコンコンッ

「失礼します」

ガララララッ

「おはようございます」
「おぉ、殊未ちゃん」
「え、殊未ちゃん!?」
「おはようございます、遼平さん」
「お、おはよう」
「何やってるんですか?」
「いや、暇だから賢さんに紙とペン貸してもらった」
「絵ですか?見せてください!」
「俺あんまし得意じゃないんだけどね…」
「……………上手いじゃないですか!!得意じゃないって嘘です!」
「…そうかなぁ」
「そうです!ね、皆さん上手いですよね?」
「っちょ!まだ見せていいなんて言ってないっ」
「おー!上手い上手い」
「兄ちゃんやるなぁ」
「どこが上手くないんか、教えてもらわなあかんがな」
「…ね?」
「………どうも」
一応頭を下げる。
見かけによらず殊未ちゃんってパワフルだなぁ…
「殊未ちゃんの歌のほうがよっぽど上手いよ」
「そんなことないです。良平さんは謙遜し過ぎです!」
それをいうなら殊未ちゃんのほうが…ってそういえば
「殊未ちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「昨日は…ありがとう」
「そんな新たまって言うほどの事はしてませんよ、救急車呼んだくらいで」
「そうじゃなくって、歌」
「あ…いえ、早く目を覚ましてほしかったから…」
「嬉しいけど…なんで歌なの?」
「おまじないなんです」
「おまじない?」
「一つ一つの歌の一つ一つの歌詞は、丁寧に思いを込めて作ったものなんです。その歌で相手が助かったり、元気になったりするように」
「へぇ………」
「あ、そんなに大それたものではないですけど」
「そんなことないよ」
「え?」
「そんなことない。俺、その歌を聴いてるといっつもやる気がわいてくるもん」
「遼平さん…」
ふと、視線に気がつく。
同室の皆さんがジーっと見ていた。
「あ、えーっと…そうだ、りんご持ってきたんです。剥きますね」
「あ、ありがとう」

サクサクサク…

気が利くなぁ殊未ちゃん。
ホントに良い子だよ。
「はい、どうぞ」
「さんきゅー。お、上手いね剥ぐの」
「あ…最初ものすごいへたくそで、でも何回もするうちに慣れてきたんです」
「へぇ…誰か身内の人入院してるの?」
「いえ…」
なんだかよくわからないが、気まずい空気が流れた。
「そ、そうだ殊未ちゃん」
「はい?」
「俺が退院したらさ、一緒に街を歩きまわってくれる…なんて訳にはいかないかな。ほら、退院祝いってことで」
「かまいませんけど…」
「じゃ、決まりね。来週の日曜の午後二時に、いつもの場所で」
「いつもの場所?」
「殊未ちゃんがいつも歌っているところだよ」
「あぁ、わかりました。あ、そろそろ行かないと」
「何か用事でもあるの?」
「はい、ちょっと…」
「じゃ、またね」
「はい、また」

ぺこっ   タッタッタッ…

そしてまた、同室の皆さんとの面白いお話や、おいしい病院食の時間が来て…
寝て、朝起きて賢さんがいて、殊未ちゃんが来て、また同室の皆さんと面白いお話をして…
そんな毎日が続くこと、一週間後。

「これでもう、兄ちゃんとはお別れじゃのう」
「たまにお見舞いにきますよ」
「はぁ…さみしくなるなぁ」
「坊主、絵続けろよ」
「はい。では、皆さん今までありがとうございました」

ぺこっ クルッ タッタッタッ

「達者でなー!」
「尻に敷かれんなよー!」

ハッ…ハッ……ハッ…ハッ…
急がなくちゃ…色々話とか準備とかしてたらもう二時半になっちゃたよ…

「殊未ちゃーーーん!」
「………はい?」
「…………ってなんで後ろにいるのさ」
「え?だってここが私のいつも歌ってる場所…」
「いや、そうじゃなくて俺遅刻…」
「いいじゃないですか、こうして来てくださったんですから」
「でも…俺自分から言い出しといて…」
「本当に気にしてませんから。ね、そんな顔して街を歩いても、楽しくありませんよ?」
「そう…だな」
「で、どこ行きます?」
「え〜っと…」
って言っても俺あんましどういうとこ行けばいいのかわかんないんだよな…
「殊未ちゃんはどこ行きたい?」
「特にはありませんけど…」
「そう…」
「とゆうか遼平さんの退院祝いなんですから、遼平さんの行きたいところに行くんじゃないんですか?」
「う〜ん…そうなんだけどね…」
「じゃあ、歩きながら決めましょう!」
「そうだね、それがいい」
そう言って、商店街を歩き出した。

「あ、あれ可愛い」
「どれどれ?…殊未ちゃん、猫好きなの?」
「はい、とっても」
「それにしてもあれはでかすぎるような…」
「可愛いっていったら可愛いんです」
そんな他愛のない話をしながら歩いていた。
三十分くらい経った頃。
なんだか話題もなくなってきて、静まり返っていた。

「そういえば、遼平さんはお昼何時ごろに食べましたか?」
「え…十二時ちょっと過ぎたくらいかな」
「そうですか…」
「どうかした?」
「い、いえ…」
そういうと、また黙り込む。
なんなんだろう…?

「「あのっ」」

…やばい。同時に言ってしまった。
どうすればいいんだろう…
「遼平さんがお先にどうぞおっしゃってください」
「いや、でも…」
「私のほうはたいした事ではありませんから」
「…いやぁ、なんか言いたそうだったからどうしたのかなぁって」
「あ…あの、実は私お昼が早かったもので…」
「あ、なるほど。…ここ入る?」
そうして俺が指差したのは、ごく普通の喫茶店だった。
すると、殊未ちゃんはコクンと頷いた。
入るということなのだろう。

カランカラン♪

「「「いらっしゃいませー!」」」
「何名様ですか?」
「えっと二人…」
「二名様ご案内いたしまーす!」
「了解しましたー!」
なんだここは。
凄すぎる…
「ご注文をお伺いしてもよろしいでしょうか」
「私はいちご&ちょこれーとぱふぇを」
「遼平さんは?」
「う〜ん…」
ここ入る?なんて言ってみたものの、俺こういう店来たことないしなぁ…
どうしよう…
「う〜ん…」
「あ、あの…そんなに悩まなくても」
「でもなぁ…」
「遼平さん」
「え、なに?」
「甘いもの、平気ですか?」
「あ、あぁ。一応…」
「じゃあ、まっちゃ&ばにらぱふぇを」
「かしこまりました」

スタスタスタ…

そして待つこと1分。
「お待たせいたしましたー!!」
「わっ、待ってない待ってない」
「ふぇ、早いですね」
「それが当店の魅力です☆それではごゆっくりどうぞ〜♪」

「…遼平さん」
「はい?」
俺の手が止まった。
「一口貰ってもいいですか?」
「あ、良いけど…」

ひょいっ   パクッ

「おいしいです」
「そうかそうか。俺もそっち貰っていいか?」
「いいですよ」

パクッ

「お、なかなか…」
「私いつもパフェといったらイチゴ&チョコレートにするんですけど、抹茶&バニラも一度食べてみたかったんですよ」
「ふーん…」

パクパクパク…

普段食べることの無いこの「パフェ」という物体は、予想以上に美味かった。
しかしそれ以上に、殊未ちゃんの表情を見ていると女の子が喫茶店によく行くのも頷ける。
だが…
「………もう無理」
「遼平さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫…だといいけど」
「今日はもうそろそろ帰りましょうか」
「うん…」
はぁ。情けない。
なんで女の子は『甘い物は別腹』なのだろう。
甘いとかえって堪えるぞ、俺は。
「あ、そういえば」
「?」
「殊未ちゃんの誕生日って、いつ?」
「えっと…2月の7日です」
「じゃ、もうすぐだね」
「………はい」
「じゃあさ、一緒にお祝いしない?」
「…え?」
「俺、一人暮しだから、俺の家で」

サラサラサラ…

「これ、うちの住所と電話番号。そうだ、ことみちゃんの電話番号も一応教えてくれる?」
「あ、はい………どうぞ」
「ありがとう。じゃ、またね」

「あ…遼平さん!」

「何?」
「…今日は楽しかったです。ありがとうございました」
「こっちこそ、楽しい退院祝いありがとうな」
「では」

その後、俺はまっすぐ家に帰った。

そして二週間後───

チクタクチクタクチクタク…

一時半、か…
こないな、殊未ちゃん…
まぁそのうち来るだろう…


チクタクチクタクチクタク…

二時か…
親にでも止められちゃったかな…
でも…きっと来てくれるさ…


チクタクチクタクチクタク…

二時半…
ちょっと遅くないか…?
もしかして事故にでも遭ってたりしたら!


ガチャッ!

「………騒ぎはない、な…」
もうちょっと待ってみるか…



三時…

ピリリリリッ ピリリリリッ

殊未ちゃんからか?
「はい、もしもし」
「あなたは刃水遼平さんですか!?」
「…そうですけど?」
「今どこにいるんですか!?」
「坂月病院の近くのアパートですけど…」
「じゃ、今すぐ出てきて!」
「どこにですか」
「あなたのアパートの近くの薬局の前!あなた、知り合いなんじゃないの!?」
「誰のですか」
「新月殊未さんよ!」
殊未ちゃんがっ!?

ガッ  ガチャッ  バタンッ

タッタッタッタッタッタッタッ…………

「この子薬局の前でいきなり倒れたのよ!?だからポケットに入ってた紙に書いてあった番号にかけてみたらっ…って聞いてるの!?もしもし!?」

なんで…なんで殊未ちゃんがっ!?
殊未ちゃん…無事でいてくれっ!!

「はぁ…はぁ……はぁ…」
「あなたが刃水さん?」
「…はぁ……はぁ……はい…」

「あなたに電話する前にすぐに救急車を呼んでおいたからもうすぐ来るとは思うんだけど…」
「…はぁ………あなたは?」
「薬局のものです。で、あなたは…?」

「……彼女は……俺の………恩人です……」

それからすぐ救急車が来て、殊未ちゃんは運ばれていった。
俺は救急車に乗ったのは初めてだ。
いや、この前ひかれた時は意識がなかったしな…
誰か自分の知り合いが救急の対象で自分が乗るというのは、思っていた以上に辛いものがある。
そんなことを考えていると、すぐに病院へ到着した。

「新月さん、新月さん!しっかりして!」
「あー、あー、急患、急患です。至急…」

「殊未ちゃん!」

ガラガラガラッ
キィィィィ  バタンッ

「殊未ちゃん…」
「君、ちょっといいかな?」
「え…」

その人は、この病院の婦長だった。
そして俺は婦長さんが話すうちに、どんどん顔が青くなっていたらしい。
婦長さんから聞いたこと。
殊未ちゃんは、半年も前からここで入院していたらしい。
病名は………心臓病……

彼女は病院から抜け出して、いつも歌っていた。
俺は何をやっていたのだろう。
散々追いかけてきて。
遊びに連れていって。
症状を悪化させていた。

…助けてもらっておいて。
俺は何も出来ない。
彼女を助けることが出来ない。
彼女は今も苦しんでいるというのに。
俺はただここに座ることしか出来ない。
情けない。

俺に…
俺に今出来ることは…

不意に彼女の顔が頭を過った。
歌を歌う彼女。
俺が事故に遭ったとき、必死に心配してくれた彼女。
俺の症状が軽いとわかった時、誰よりも喜んでくれた彼女。
俺の描いた絵を見てびっくりする彼女。
りんごを剥く彼女。
照れている彼女。
きょとんとしている彼女。
頬を膨らます彼女。
力説する彼女。
彼女の笑顔。彼女の涙。
そうだ…
俺のするべきことは…
彼女を信じること。
彼女が一刻も早く回復するのを願うこと。

彼女の…帰る場所を作っておくこと


そう思った瞬間、俺は走り出していた。





























「それでは皆さん聞いて下さい。」
「歌詞、新月殊未。曲、新月殊未」
「ギター、刃水遼平」
「ボーカル、緒沢春香」
「新人レコード大賞大賞受賞」
「Helpsデビュー曲」

















「─明日を伝えよう─」



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