「来た?」
「来たみたいだな」
「一人?」
「いや、二人だろう」
「もう一人は誰?」
「さあ? 俺には分からないな」
「ふーん……でもターゲットじゃないんだよね?」
「違うな」
「じゃあ、無視していいんだよね?」
「そうだな、不可視、不可算の存在とでもしとこうか」
「じゃあ……」
「3人で……」
「遊ぼう」
「遊ぼう」
柚木詩子は正直困惑していた。
唐突なこと、でたらめな事には慣れているつもりだった彼女が、困惑していた。
なにせ、いきなり『カウンター連盟』なるものに呼び出されたのだから。
しかもその場所が『魂を封じ込める場所』だとか何とか……。
「どこ?」と交番で尋ねた彼女を誰が責める事が出来ようか?
しかもその道中も危険極まりなく、言うならば『危険が危ない』という感じ。
世界には3人いると言われる彼女のそっくりさんや、スケッチブックでぺしぺし叩くみにがぁる。
何か弱いものいじめしてる気にならないでもない微笑ましいちびっこ達と、その上にいる気楽なゆーれい。
「動くな!」とか素で言ってる超能力被れの怪しいおにーさんと、自衛隊の装備を持ってる別の意味で怪しいおじさん。
酒びんもってツッコミいれまくりなおねーさんと、その状況で呑気にトランプしてるがぁる。
しかもお供につれていった川名みさきというおねーさん。
「目が見えないけど普通に頑張るよ」と言っておきながら、肝心な所で役立たず。
詩子は思った。
「茜ー……やっぱりパートナーはあんたじゃなきゃ駄目だわー……」
半泣きになりながらも、とりあえず彼女は頑張った。もうヤケ。
で、ようやく辿り着いた先に待っていたのは、おにーさんとうさみみな女の子。
「うわー……あのうさみみの子可愛いー……」
癒される。詩子は癒される。
小さい子はいい、基本的には男女問わないけど女の子は少々大きくても可愛いので許せるからどっちかというと女の子がいい。
後に彼女は語る。
「スケブの子、お互いを庇う様に立っていた子、あの子たちに会わなかったら途中でUターンしてたかな、あたし」
「あの子達が見れない後ろの人が可哀想かも。うん、そういう意味で同情するよ」
そこまで言うか、詩子。
まあ、そんな彼女でも勝負となれば話は別、何せクロスカウンターの名手だから。
というか体の隅々まで体質が染みついちゃってるので、自動的にカウンターしてしまう。
ちょっとバイオレンスなロリコン少女、それが柚木詩子。
ちっちゃい子も容赦なくカウンターで吹き飛ばしていたのを、パートナーは目撃していた。見えないけど少なくともそんな音を聞いた。
そして、先へと進む詩子を恨めしそうに見ていたのを、パートナーは目撃していた。見えないけど少なくとも半泣きの声を聞いた。
とりあえずそんな経緯を経て今に至る。
「カウンター連盟へようこそ、柚木詩子さんっ。会員ナンバー2のまいだよ」
「会員ナンバー1の住井護だ」
「あたしたちは、相手の実力を利用して戦うプロフェッショナルなんだよ」
「うむ、相手が強ければ強いほど我々も強くなる。まさに燃えるヒーロー」
「……ねえ、詩子さん聞いてる?」
相変わらず癒されてるので話なんか聞いちゃいない。
そんな彼女に敢えて感想を聞いてみよう。
「男の人の方、君の声邪魔なんだけど」
住井、合掌。
「くそお! ナンバー1の命令だ、まいちゃん、行ってこい!!」
「らじゃあ!!」
ひゅいーん、と飛ぶ様に詩子に突っ込んで行くまい。
それと同時に詩子の黄金の右腕が動く。
「クロスカウンター!!」
「ひゃうっ」
詩子の右腕は、的確にまいのぷにぷにした頬っぺたを捕らえた。
パンチではなく人差し指でそのほっぺを押したい、カウンターの最中にそう考えた彼女を賞賛すべきかどうかは悩みどころではある。
しばらく一緒にいてそんな彼女の本性に気付いているのだろう、後ろのみさきは呆れていた。
そして思った。
「手伝うの辞めよっかな……」
その後、この二人との闘いに詩子が勝利するまで、彼女は一切手を出さなかった。本当に。
彼女もまた不真面目の結晶、いわゆるサボリ魔である。普通に頑張るんじゃなかったのだろうか。
そうこうしているうちに、まいは詩子のカウンターをもう一発受けてふらふらになっていた。
「可哀想だね……まいちゃん」
ポツリと呟く詩子。だがその表情には笑みが見える。サド万歳。
「うぅ……こうなったらカウンター連盟の意地にかけて、カウンターいくよ!」
カウンター連盟とかいうくらいなら最初からそうしろよ、と言いたい所だがそういうわけにもいかない。
プロと言えどもカウンターを実行するためにはそれなりの経過や準備が必要なのだ。
詩子だって長い道のりを経てここまで来たからこそ、今クロスカウンターの名手としていられるのだ。
忘れてはいけない、努力無しの天才なんていない。
「ものまねっっ!!」
そうまいが思いきり叫ぶと同時に、忘れられていた住井が飛び込んでくる。黒い布を持って。
そして、その黒い布でまいの姿を隠した。
「何してるの?」
「ん? いや、別に」
ごそっ……ごそごそっ……
「……っていうか……何隠してるの?」
「気にしないでもらえるとありがたい」
するっ……ぱさっ
「!! 今の、明らかに衣擦れの音じゃなかった!?」
「い、いや……」
「どいて、今すぐ!!!」
彼女の血走った目を見て、素直に場を離れる人はまずいない。
詩子の頭の中にはいかなる光景が映し出されているのだろうか……そしてそれを想像するのは人としていかなるものだろうか。
「じゃーん、どう、似てる?」
まあ、そんなこんなでまいが詩子にものまね完了。覗けなかった詩子は残念無念、やつ当たり。
彼女には攻撃手段が3種類ある。いわゆる通常攻撃とクロスカウンター、そして不意打ち。
不意打ちは浪漫の一つ。どこからともなく現れてどこへともなく去る。素敵なことこの上ない。
カウンターを2発食らってダウン寸前なまいならノープロブレムで倒せるだろう。
──そんなことを考えるほどの理性が今の詩子にあるわけがなく。猪突猛進ゴーゴー。
「クロスカウンター!!」
「!!」
まいの右腕は、的確に詩子の憎たらしくかつ意外と柔らかい頬っぺたを捕らえた。
もちろん力入ってます。何しろ容赦なくやられてるから。
愛ゆえの行為でも、それに気付かずにいればただの暴力に過ぎない。そんな切ないすれ違いの一例と言える。
「な、殴ったわね……ここ数戦殴られたことなかったのに!!」
そして、この出来事が詩子に火をつけた。
悲劇は必然的に生まれ出るものなのだ……なあ、そうだろう住井?
「あたし疲れた……お兄さん、代わってくれる?」
「ラジャー」
まいの姿が元のうさみみ少女に変わり、住井とバトンタッチ。
「ふっふっふ、何気にカウンター連盟ナンバー1の俺の実力みせてやる」
気付け、彼女自身の本当の力に。本当の彼女に。
「いくぞっ!」
「クロスカウンター!!」
「がはっ! さすがにやるようだな!」
「ていっ」
「くっ! ならもう一度攻撃だ!!」
「クロスカウンター!!」
「ぐっ!!!」
「ていっ」
「ぐあっ! ……ふっふっふ、効かんな」
「お兄さん……ひざが笑ってるよ」
あー……何て言うか。いじめ、カッコ悪い。住井、カッコ悪い。詩子様、カッコイイ……とは本人の談。
「君みたいな三下じゃ勝負にならないよ、早く後ろの────出しなよ」
さあ問題。「────」の中には何が入るでしょう?
一番、さっきこのあたしを散々な目に遭わせてくれた女の子。
二番、君よりはもうちょっと手応えがある、そこのうさみみ被った少女。
三番、さっき生着替えを見そこなった、そこの撫で撫でしたくてしょうがないロリっ子。
正解はまいが激しく怯えてる事から判断できますが、どれにしろ多分怯えるので結局は想像にお任せします。ええ。
「ちっ……ならばっ!」
そう言いつつ住井は詩子を舐める様に見る。知り尽くすために、力を利用するために。
「何? なんか変な目であたしを見てるー…」
あんたに言われたくない。
「なるほど……」
彼も仮にもカウンター連盟の一人。相手の力を利用し、そして戦うプロフェッショナルなのだ。
「その攻撃力、取り替えてもらうぞ」
「っ!!」
魔術的な光が住井と詩子を包み込み、そして……
光が収まった時その場に立っていたのは、詩子一人だけだった。
膝をつく住井、それは敗北の決定的瞬間だった。
「な、何故だっ! 今までは反動なんて無かった筈だっ!!」
「教えてあげる」
にこっと笑いながら、詩子はゆっくり近づく。
さあ、私刑の終わりの時だ。去るがいい、愚かにも彼女に近づこうとした者よ。
「歴史は常に新しい物を求める。君の戦いはもはや古い……そういうことだよ」
彼女の姿が一瞬で住井の視界から消え、そして彼の背後から現れる。
人は彼女を神出鬼没の悪魔と呼ぶ。捕らえようとすると自らが傷つき、避けようにもいつのまにか後ろにいる。
彼女から逃げることは出来ない、立ち向かうことも出来ない、出会った事自体が不幸なのだ──
「さて、と。後はまいちゃんの番だよ♪」
気が済んだのか、その最後通告は笑顔で告げられる。
けれど今の詩子さんは未だファイティングモード。誰も彼女を止めることは出来ない。
「さあ、神妙に覚悟しなよ」
本当なら、さっき不意打ちを使わずにいれば、不意打ちを警戒されることもなく、もうちょっと楽に戦えた。
これは彼女の意地だ。
「むぅっ……でも、まだあたしは負けないよっ」
ばさっ! と派手にワンピース型の服を脱ぎ捨てる。シャツ姿だけど萌えている場合じゃない。
そのまま後ろ向きにゴソゴソとダンボール箱の中から変身セットを探す。ちっちゃいけど萌えている場合じゃない。
急いで着替えようとするから手と首が引っかかって半端な状態で困っている。愛らしいけど萌えている場合じゃない。もういい、省略。
無事、変身終了。
今のまいは詩子だ。神出鬼没の悪魔、柚木詩子だ。迂闊に飛びこめばカウンター……それは詩子自身がよく知っている。
けれど。
そう、彼女はいつだって変わり者だから。
こんな状況は初めてだけど、いつだってでたらめで、唐突で、自分のやりたいことに忠実だから。
それもまた、柚木詩子という少女の本質だから。
だから。
「この勝負に勝つのは……あたしよ、まいちゃん!」
「クロスカウンター!!」
交差する腕。
絡み合う物、その先にある拳、信念。
「負けない、絶対に!!」
「えっ!!」
まいが吹き飛び、そして着地する。
そのまま地を蹴り、勢いで詩子に再び特攻する。
さあ叫べ。
正しき使い手よ。
技の名を……意志を込めて!!
「クロスカウンターッッ!!!!」
ドンッ!!!
変装具は散り、まいの体は完全に宙を舞った。
(あ……あたしは負けたんだ……)
今まで、ずっと遊んできたこの場所で。完膚無きまでに敗れた。
それにしてもこのまま地面に叩きつけられたら……どうなるのだろう。そんな呑気な事を考えながら、彼女は目を閉じた。
(…………)
(…………?)
いつまで経っても地面に着かないことに不思議に思い、目を開く。
「大丈夫?」
正面には詩子の顔。
いつの間にか、まいは彼女に抱きかかえられていた。
動こうにも、ダメージが大きくて殆ど動けない。
「まいちゃん……」
逃げようとするまいを、ぎゅっと詩子は抱きしめる。
痛くない程度に。けれど、温かく。
(あ……)
こんな温もり、しばらく感じてなかった。
ずっと……『彼女』と別れてからずっと。母からも、誰からも、まいは。
そんな心地よさの中、まいも、わずかにしか動かない体で、ほんの少しだけど、抱き返した……。
(わぁっ……ちっちゃくて可愛くて、でもあったかーい……ずっと抱きしめてたいなぁ……持ちかえりたい……)
まあ、詩子はこんな事を考えていたわけだが……この程度なら微笑ましい、で済むだろう。多分。
ちなみに二つの交錯する思いの中の抱擁は、みさきが数十分後に止めるまでずっと続いていた。
そして、数週間後。
「ふう、空気が気持ちいいね〜」
「そうだね……詩子お姉ちゃん」
詩子とまいは、一緒に『カウンター連盟』として旅をしていた。
まいは詩子をお姉ちゃんと呼び、その度に詩子はまいを抱きしめる。可愛くて。可愛くて。今もそう。
その光景を、後ろから住井少年が呆れて見ている。
「ロリコン柚木さんがまた始まってるよ……」
「あははっ、まあ抱きしめたくなるのも分からないでもないよ、わたしも」
「まあ……なあ?」
みさきも、このメンバーに付いて来ることにした。
住井と共に、前衛二人の様子に呆れる毎日を過ごしている。
住井とはわりと馬が合うらしく、旅の中、目が見えないという不利な点を、手を繋いでサポートしているのも彼だ。
一組のカップルが生まれるのもそう遠い話ではないのかもしれない。
「それで……次のターゲットはどんな人なの? お姉ちゃん」
詩子に抱きしめられつつ──嬉しそうな表情のまま──まいは尋ねる。
「えぇっと……住井君に似たタイプかな? 相手の力を奪って自分の物にする凄く強いお嬢さんがいるんだって」
「凄く強いの?」
「あたしはそう聞いた」
「……大丈夫?」
不安そうに、詩子の胸の中で小さくなるまい。
それを、詩子はぎゅっと抱きしめる。可愛い……と言いたくなりつつも、それを抑えて、不安を取り去るために、こう言う。
「大丈夫。どんなに力があっても、あたしが勝つよ」
力を奪っても、いくら強くても、奪いきれない信念がある。誇りがある。
「あたしのカウンターは、誰にも破れないよ」
そう、彼女が思い続ける限り、彼女は最強であり続けるのだ。
(後書き)
えーと、ごめんなさい(何
本当はクロスカウンター返しが格好よかったから書いたはずなんですけど。
何か最近のストレスとかそういうのを全部これに詰めたと言いますか。書きたいのを書いたといいますか。
後半はさすがにテンションダウンしてしまいました。これが正しいんですけどね(苦笑
えっと、解説です。
使用キャラは柚木詩子と川名みさき。ASタイプはΞです。
戦闘野郎がver5になったのに、今まで通りで一度やってみました。援護もなしです。意味ないので。
1戦目 柚木詩子 上月澪
2戦目 アリサ なのは&久遠
3戦目 国崎往人 橘敬介
4戦目 神尾晴子 神尾観鈴
で、5戦目はエクストラ、住井とまいです。
詩子はクロスカウンター80%発動状態で、ゲージは多分2〜4くらいだったかと。
3ターン目 まいが攻撃、クロスカウンターでダメージ。
4ターン目 詩子が攻撃。
6ターン目 まいが攻撃、クロスカウンターでダメージ。
8ターン目 詩子が攻撃。
9ターン目 まいがものまね。
12ターン目 詩子が攻撃、クロスカウンターでダメージ。
……引っかかりました。それはもう、面白いくらいに。
12ターン目 まいが住井と交代。
16ターン目 詩子が『本当の自分』で回復。
一応描写してますね。
なお、不意打ちなら倒せたとありますが、実際はもう少しHPありました。
16ターン目 住井が攻撃、クロスカウンターでダメージ。
20ターン目 詩子が攻撃。
20ターン目 住井が攻撃、クロスカウンターでダメージ。
24ターン目 詩子が攻撃。
別名、リンチ(何
24ターン目 住井が『トレード・攻撃力』使用。反動でダメージ。
弱体化したのは知ってたんですが、どうなったのかは知らなかったので驚きましたね、少し。
28ターン目 詩子が『神出鬼没』で住井撃破。
ご臨終です(ぉぉ
31ターン目 まいが再び『ものまね』
32ターン目 詩子が攻撃、まいがクロスカウンター失敗して相手にダメージ。
20%の確率に賭けてみました。
その方が面白そうなので(何
結果は…知ってのとおり、成功です。
34ターン目 まいが攻撃、クロスカウンターでまい撃破。
なかなか燃えるバトルでした(ぉ
ちなみに、次のターゲットというのは遠野秋葉嬢です。勝てません(ぉぉ
では、また次のバトルで!(何
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